『和菓子』 NHK「美の壺」制作班・編集




和菓子の魅力を三つの切り口で
映像(DVD)と合わせることで魅力が倍増

本当に、本当に不思議なご縁で、
海外で和菓子の紹介をする講師を引き受けました。

まったく和菓子を知らない外国の方に
『和菓子とは何か』を実演しながら説明せねばなりません。

私の持ち時間は1時間。
何を伝えるべきか?

何十冊も和菓子の本を読みこむ中で、
切り口の鋭さに脱帽したのが本書です。

何が凄いって、和菓子の魅力をたった三点に絞ったことです。

さらに、放送(DVD)を通して、
インタビューした職人の肉声や手技、
高橋美鈴アナの卓越したナレーションを楽しむことが出来ます。

類書で紹介済みのこともありますが、
本書で初めて知ったこともありました。

P.42 「菓子が季節を連れてくる」の水無月の説明。

菓銘の通り六月だけに登場するこの菓子の由来のひとつは、
『氷室から切り出した氷を模した』
このことは知識として知ってはいました。

しかし「氷室から氷を切り出し献上する道中の映像」は初めて見ました!

文献で紹介されていたことは真実だった、
そして今でも脈々と受け継がれているんだとわかり、感動しました。

水無月の例だけでなく、
和菓子の歴史を知る上で貴重な文献の原本の映像も、
本書の内容に深みを与えています。

本書は、映像(DVD)と併せて読むことで真価を発揮します。
両方楽しまれることをお勧めします。

【文責 宮澤 啓】

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NHK「美の壺」制作班・編



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本書の中で、個人的に「お宝」となっている一文があります。
追記にその一文と理由をご紹介します。


その一文とは…

P.46 「身近な自然の豊かな変化を写し出す」の中から、
『和っていうのは…』という水上力さんのインタビュー。

実は、海外経験豊富な水上さんに、
私の講演台本を事前に見ていただいた時のこと。

「春は桜、夏は朝顔、秋は菊、冬は寒椿を作ります」
という私に、こう問うたのです。

『その内容だと、和菓子職人と粘土職人はどこが違うの?』

この質問を皮きりに、徹底して質問攻めにあいました。
・なぜ菓銘にまつわる物語を語らないの?
・なぜこれほどまでに意匠の種類があるの?
・なぜ様々な菓子が同じ素材(ねりきり)で作られているの?
などなど。

それらの質問は、水上さんが海外のゲストから数多く聞かれるものでした。
そして、それらの質問に決して答えは言わないのです。
自分で考えるべきだと。

たくさんの質問の中から、忘れられない究極の問いは、
『あなたにとって、和菓子の「和」って何?』

あまりに漠然とした大きな質問に、
私は答えに窮してしまいました。

そして水上さんも答えを言いません。

その答えが、本書に書かれていたんです!
興味の尽きない方は、是非本書を読んでご確認ください。

その前に、自分なりの答えを準備することをお忘れなく。

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