『春夏秋冬 森の中にある小さな工房の和菓子レシピ』 渡辺麻里・著


自然豊かな森の湧き水で作られた
和菓子はどんな味がするんだろう。

どんな食べ物も、料理する際の水で
味が変わると聞いたことがある。
ご飯を炊くときも、味噌汁を作るときも、
はたまた野菜の煮物をするときだってそう。
おいしい水で作られた料理の美味しさは格別
だというのだ。

普段の生活では料理でも、お菓子でも、
作る際に使うのは普通の水道水だ。
いつも変わらない、綺麗に浄化された人口の水。
たとえどこか違う場所に行ったとしても
蛇口をひねればほとんど同じ水が出てくる。
それで作ったお菓子はやはりどこか同じ味に、
言ってしまえば個性のない味に
なってしまっているのかもしれない。

均一に整えられた水で作るお菓子と、
森の滋養を含んだ水で作られたお菓子。
この2つだったら、私は後者を食べてみたいと思う。

本書p8の『寒天』はまさしく水の味で
変わってくると言えるお菓子だろう。
普段は寒天だけを固めたお菓子を作ることは
あまりないけれど、この本の著者である
渡辺さんの住む北海道のニセコの森で取れた
水で作る寒天ならば、きっとそれだけでとても
贅沢なお菓子になるに違いない。

それから『水ようかん(p20)』も大変
水分量の多いお菓子で、その大部分を占める
あんこは小豆から練り上げるまでに
たくさんの水を必要とする。
美味しい水で作られた餡を、またその水と寒天で
固めたお菓子。水を食べていると言っても
過言ではないだろう。
抹茶の水ようかんも、ここらで食べる
抹茶のお菓子とは一味違ってくるのではないだろうか。

p80には枝豆あんとミニトマトのコンポートを
使った『水まんじゅう』も紹介されている。
枝豆もミニトマトも、ニセコで育ち、収穫されたものを
使っているということで、水まんじゅうの生地との相性も
とても良さそうだ。

著者の渡辺さんの営む和菓子工房「松風」は、
月に一度販売会も開催されているそう。
北海道へ行った際にはぜひ足を運び、
ニセコの森の湧き水で作られた
お菓子を頂いてみたいと思う。


【文責 加部 さや】


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渡辺麻里・著 成美堂出版



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