『和菓子 夢のかたち』 中山圭子・著
東京藝大卒業後、虎屋文庫にて展示企画や資料整理、研究に携わる著者が、
和菓子の魅力を素敵なイラストとともに紹介する瑞々しいエッセイ
虎屋文庫の野上さんの本を紹介したら、
中山さんの本を紹介しないわけにはいきません。
たくさんの著作の中から最初のご紹介は、
『和菓子 夢のかたち』
理由は、私が初めて買った中山さんの本だからです。
中山さんの本は、
和菓子の研究者として側面から、
論文っぽい内容のご著書が多いです。
しかし、この本は本当に瑞々しい「エッセイ」。
中山さんが、なぜ和菓子と出会い、
その魅力の虜になっていったのか、
エピソードが豊富です。
また、疑問がわいたときの行動力が半端ではありません。
P.132「南蛮菓子あれこれ」では、
南蛮菓子の企画展の準備をすすめるうちに、
どうしてもポルトガルに行ってみたい衝動を抑えきれず、
現地へ取材旅行に出かけてしまうのです!
取材の詳細は本書に譲りますが、
目的のお菓子を買いまくって、
手荷物がお菓子でパンパンの状態で
ロンドン・ヒースロー空港で飛行機乗り換え時のエピソード。
ちょうど厳戒態勢の警備の中、
手荷物を入念に確認されてしまいます。
あやしいモノが入っている訳でなないので安心していると、
機内の熱気で一部のお菓子が溶けだしていたのです。
「これはナンダ!!」と尋問される場面は、
中山さんの他のどの本にも登場しえない、
エッセイ本ならではの微笑ましいエピソードでした。
また、阿部真由美さんのイラストが本当に素敵です!!
お菓子への慈しみを感じます。
しかも美味しそうです。
見てください、このういろう製の胡蝶。
ふっくらとして、優しい色合いで、
愛おしいんですけど、食べちゃうんですよね。
本当に「食べる芸術」だとイラストからも伝わります。
中山さんの文章も、いつもよりはとても身近で優しく、
阿部さんのイラストと相まって、
和やかに癒される和菓子本です。
【文責 宮澤 啓】
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