『和菓子 美・職・技』 グラフィック社・編

海外の方に和菓子を紹介する
その時もっとも参考にした一冊
そして私たちの挑戦の原点を記した書

私が人生で初めて人前で和菓子の紹介をしたのは2006年。
それまではお店の奥で作っているだけでした。
そのあまりの反響に驚きました。

以来、口コミだけを頼りに、次々と講師を引き受けるようになるのです。
2007年4月
2008年10月 Cafe Douce Ebis
2009年6月 日・EUフレンドシップ at Takasaki

海外の方にも和菓子の魅力を紹介したいと思うきっかけは、このイベントでした。駐日EU代表部のお嬢様(サラちゃん)が、あまりにも好奇心旺盛に和菓子作りに夢中になってくれたこと。そして「美味しい」を連発して和菓子を食べてくれたことに感動したのです。もっと多くの方に和菓子の魅力を伝えたい。和菓子を世界に!と初めて思った瞬間でした。

その思いは、様々なご縁が重なり結実します。2012年、日本とニュージーランドが国交60周年を迎えた記念の年に、日本文化を紹介するイベント「Taste of Japan」から講師の依頼をお受けするのです。
Taste of Japan 2012 at Auckland Museum

そして昨年、二度目のニュージーランドへ。
娘とともに和菓子の魅力を紹介させていただきました。
Taste of Japan 2018匠 at Auckland Art Gallery

二度のNZに同行し、私が最も頼りにしたのが本書『和菓子 美・職・技』です。「和菓子とは何か」という根本的な疑問に、独自の切り口で解説・紹介を試みています。

1:和菓子歳時記
茶の湯、茶道の発展とともに磨かれ、洗練された和菓子を、12か月に分け、和歌とともに紹介。意匠・デザインがきれいなだけでなく、菓銘や和歌を添えることで、単なる季節感を超えて、情景や想いまで伝えることができる。一輪の花から山の景色まで。「和菓子を通して日本の心を伝える」という私の講演のベースはここからきています。
菓子・器・和歌のセレクトが素晴らしい。

2:「雅の和菓子」「武家の和菓子」「庶民の和菓子」
和菓子と言っても、京都と東京では、デザインも精神性も全く違います。抽象の京菓子、具象の江戸菓子などともいわれていますが、これほど情熱的な取材と、美しい写真で紹介した本は他にないと思います。
「雅な和菓子」を代表し「とらや」を紹介したページの一部。
お菓子の写真も、工程写真も、あまりにも美しい。

「武家の和菓子」を代表し「両口屋是清」を紹介したページの一部。
江戸後期の見本帳の菓子を現代の技で復元するプロジェクトを紹介。
菓子の美しさだけでなく、店主と職人の情熱まで伝わってくる。

「庶民の和菓子」を代表し「榮太樓總本舗」を紹介したページの一部。
私が鳥肌が立つほど感動し、最も影響を受けたのはこの絵図です。
「榮太樓工場図」(柴田眞哉・作)

大量生産する製菓機械なし、冷凍・冷蔵庫なし、保存料なし。そんな時代の和菓子屋をリアルに描写した絵図。餅は杵と臼で搗いています。竈には大量の蒸籠が積みあがっています。保存料のない時代に、日持ちのしない餅やまんじゅうを、こんな勢いで作っているということの凄さ。飛ぶように売れて、買った人は固くなる前にすぐ食べたことが、目に浮かびました。

凄い!格好いい‼

今の時代に、こんな和菓子屋を再現したい。
この想いが、微笑庵の「和菓子ルネッサンス宣言」の原点になっています。

和菓子をもっとヤバく!

早起き・手仕事の職人文化を未来へ‼

和菓子を世界に紹介するエッセンスであり、私たちの挑戦の源である本書を、2019年の年頭に紹介させていただきます。

【文責 宮澤 啓】

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