『和菓子とわたし』 金塚晴子・著

金塚晴子さんは、1997年の作家デビュー以来、
家庭で作れる和菓子の教科書的な
レシピ本の執筆を重ねられました。
その数15冊!
この分野では圧倒的です。

執筆、教室、テレビ出演を重ねる中で、
金塚さんのレシピは、
より美味しく、美しく、失敗を少なく
する工夫を重ね、磨き続けられています。

そんな金塚さんの本の中で、
唯一レシピの一つもない本がコチラ。
金塚さんの創作活動の源泉を
文章から拝見することが出来る貴重な一冊です。

「茶席菓子を作ることに」(P.14)からは、
10個の注文のために、20個も30個も作っては、
その中からきれいなものだけを選んで届ける、
という金塚さんの菓子作りへの姿勢が伺えます。

おそらく、国民的大ヒットを生み出し続けた、
音楽ディレクター時代の仕事への姿勢、こだわりが、
和菓子作りでも生き続けているのだと思います。

「和菓子スタジオへちまの誕生」(P.26)からは、
「へちま」の誕生秘話とともに、
処女作「ほーむめいど和菓子」
の誕生秘話も紹介されています。

最初の本が世に出たのは、
説明できない様な偶然だったかもしれませんが、
その後のご活躍を拝見するに、
よくぞ金塚さんをデビューさせて下さった!
と文化出版局の担当編集者の方には、
心からの拍手をお送りしたい!!

「お茶と羊羹と本と」(P.74)では、
和菓子店での本格的な修行経験がない金塚さんを、
支え、勇気づけているもののひとつは
「本」
だということをしみじみと感じるエピソードです。
おそらく、金塚さんほど新刊から古典に至るまで、
和菓子の本に親しんでいる方は少ないと思います。

平成3年に300円で出版された「羊羹百話」を、
神田の古書店で4,000円で購入したエピソードは、
後日、小城羊羹の村岡社長との対談で、
社内の語り草となるエピソードとなっています。

文章、語り口は、大変穏やかで、
やさしい気持ちになりますが、
掲載写真は、焼印ひとつとっても完璧で、
プロとしての厳しい美意識で編纂されています。

金塚さんの一連の創作活動の源泉を
この本から感じることが出来ました。
レシピ本もいいけど、随筆も良いものですね。

【文責 宮澤 啓】


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『和菓子とわたし』
金塚晴子・著 淡交社



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