『地元菓子』 岩菜晃子・著



この表紙の写真、何に見えますか?

実はこれ、和菓子の夏の風物詩ともいえる水饅頭。
福井県などの一部の地域では、水饅頭はこうして盃(うつわ)に入って
水に浮かべた形で販売されているのだそうだ。
注文すると、こうして直前まで冷やされた水饅頭を
つるりとすくって出してくれるという。
こんな形の水饅頭を食べたことがある人はどれくらいいるだろうか。

その土地にはその土地のお菓子がある。

たとえば、私の暮らしている群馬県の名物といえば
清月堂の旅がらすやガトーフェスタハラダのラスク、
伊香保温泉の湯の花まんじゅうなどが有名だろうか。
沼田のフリアンの味噌パンや多助の俵最中、
焼きまんじゅうなどが多くの地元の人から愛されているお菓子でもある。
群馬のお菓子は塩を入れたあんこや
味噌に代表するように、甘じょっぱい(甘辛い)味付けが特徴だ。
ただ私は専門学校へ入学するまでいつも食べていたあんこが
塩が入ったものだということを知らなかった。
こんな風に、その土地にはその土地なりの味付けや材料を使った
お菓子というものが日本各地に存在するようなのだ。

p12の謎12のコラムに書かれている”西日本の
お煎餅は玉子煎餅の謎”を読んでいると、
どうやら東日本ではお米を使った甘くないおせんべいが主流であり、
西日本では砂糖や卵を使った玉子煎餅が多いとのこと。
また、春に食べる桜餅が東と西で道明寺と長明寺に分かれている
(p71に日本全国の桜餅の分布図が載っています。これも必見!)のは
知っていたが、柏餅までもが違うとは驚きだった(p67)。

『人間誰しも自分が生きてきた環境で身につけたことが
世の常識だと思っている。しかしひとたび小さな世界を出れば、
その常識はいとも簡単に覆される。それは柏餅の
葉っぱひとつとってもそうだ。』(本文より)

前に一度、柏餅と名がつくのになんだかよく知らない
丸い葉っぱで包まれたものを食べたことがあった。
実はそれが四国や九州、関西地域で柏餅を作る際に
使われるサンキライという葉っぱだったそうなのだ。
どうしてサンキライをカシワと呼ぶようになったかは
詳しくはわからないそうなのだが、どうやら昔食べ物を置く葉のことを
かしわと呼んでいた所以で、食べ物を包む葉っぱを使う餅ということで
柏餅と呼ぶようになったとか。

それから、p74の”けいらん”というお菓子についてのお話も面白い。
白い餡入りのお餅に、色のついたお米が散りばめられている
というのがこのお菓子の基本スタイルのようだが、
見たことも聞いたこともなかった自分にはいまいち想像がつかないが、
姿の近いものとしては赤飯まんじゅうだろうか。
これもまた全国各地で、いろいろな名前、形で存在しているようで、
”いがもち”や”なるともち”というのもあるのだそう。

こんな風に、地域ごとに異なるお菓子というのも気になるところだ。
どこかに旅行した際、その土地ならではのお菓子
を探して歩くのも楽しいかもしれない。

【文責 加部 さや】


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『地元菓子』
若菜晃子・著 新潮社



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