『京菓子読本』 山口富蔵・著

 菓子の美しさと物語の両方を学べる一冊
私の京菓子の教科書

菓匠京山での和菓子修業。
師匠の本棚でこの本に出会いました。

京菓子の凛とした美しさに息を飲みました。

膨大な手間暇をかけ過ぎた菓子は、
芸術かもしれないけど京菓子ではない。

シンプルで抽象的な意匠、
四季の移ろいとともに微妙に変化する色彩、
物語を秘めた菓銘などを通して、
召し上がる方に無限の広がりを感じて頂く。

先人から脈々と続く古典的なお菓子に
「末富らしさ」を加えて表現されています。
(特に水色の使い方)

また、古典はもとより、
大好きなクラシック音楽を、
京菓子の技法で表現する斬新なお菓子には
本当に驚きました!

添えられている文章が、
茶人や研究家ではなく、
現役の和菓子職人ならではの温かみがあり、
共感して何度も読み返しました。

お菓子が丁寧に作られていることは元より、
器の素晴らしさ、下布の気配りなど、
写真のクオリティーの高さが凄いです。

この本は、読んで終わりの本ではなく、
菓子を作るたびに開く教科書のような存在。
もう20年近く愛用しているので、
表紙もとれてボロボロになってしまいました。

さらに、この本の凄いところは、
「和菓子教室」まで掲載されているところです!

和菓子職人で唯一、
NHKの「プロフェッショナル」に紹介された菓匠が、
家庭の道具でできる和菓子作りを指南しています。
これは本当にお宝だと思います。
(実際この本はAmazonでとんでもないプレミアが付いています)

本を読んであまりにも感動して、
ついには逢いに行ってしまいました。

この時の貴重な思い出まで書き始めると
少し長くなりすぎますので、
山口さんの別の本のレビューの時に
紹介させていただけたらと思います。

本で人生が変わる。
そんな体験もさせてくれた一冊です。

【文責 宮澤 啓】

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山口富蔵・著 中央公論新社



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